Friday, March 17

『シンプルで合理的な人生設計』


探しても見つけられない青い鳥は心の中の物語に棲む


『シンプルで合理的な人生設計』(橘玲)を読んで。

例によって橘玲さんの文章は身も蓋もない。本書も多くの人にとっては「不都合な真実」かもしれない。

「幸福」を、金融資本、人的資本、社会資本の総体として定義したときに、その3つから隔絶して生きている人たちにとって本書は面白くも何ともない本となるだろう。

貯金や資産はない、いい仕事にもありつけない、恋人も友だちもいない、そんな人がこの本を読んでも絶望や怒りしか湧いてこないのでないか。

何かの「陰謀」で自分からそれらが奪われていると憎悪を膨らませるか(手製銃の暗殺者のように)、「親ガチャ」思考で親が悪いと諦めるしかないのでは…。

成功するための資質(知能や運動能力、あるいは性格なども)は、かなり遺伝で決まっているという。だから能力や才能のある人は一時の不遇があってもいずれは頭角を現して成功の道へ進む(途中で投げ出さない限り)。

つまり、親から資産や人的資本を譲り受けるか、遺伝的な「ギフト」をもらっていない多くの人間にとって成功への道は厳しいということになる。

幸せは、お金ではない、恋人や友だちに恵まれてなくても、一人ぼっちでも自分のしたいように生きるのが幸せです、という幸福論もあるだろうが、本書はそういった弥縫の考え方は取らない。

一昔前なら、俺には金融資本も人的資本もない(貯金なしで低賃金)が、大事な家族がある(社会資本がある)という幸福論もあったのだろうが、今は低収入だと結婚も難しい。

つまり、幸福な人は、その3つの資本すべてを手に入れて、不幸な人はすべてから遠ざけられている(というか、それが「幸福」と「不幸」の定義となっている)。

実態的には、金融資本→人的資本→社会資本というベクトルがあるように思う(親が裕福かどうかが大きな決め手)。

この、ある意味当たり前の現実の中で、私が本書から得た教訓?は、

よく眠る、散歩する、好きな仕事を死ぬまで続ける、親密な人間関係を維持する、投資するならインデックスファンド…

ぐらいだろうか…。シンプルではある。