Tuesday, November 30

なぜそんな


なぜそんなかたちかせいたかあわだちさうそのくきくらんくじやうにまがつてる

なぜそんな形かセイタカアワダチソウその茎クランク状に曲がつてる

いろんな葉が枯れて隠れていたものが見えてきた。あるセイタカアワダチソウの茎が、驚いたことにクランク状に曲がって立っている。どんな経緯があってその茎が曲がったのか気になる。いずれにしても逞しい奴だ。


そのもちのみきにあるもんやうはさるのおしりのあなそのもの

そのモチノキの幹にある文様は猿のお尻の穴そのもの

等々力。モチノキ科の木の幹はいろいろな模様があって面白い。そのモチノキの文様がどう見てもそう見えるのは私の心が汚れているからか?

Monday, November 29

いちめんの


いちめんのはなかたばみのはなのなかにもおちつかぬものありしきりにゆれる

一面のハナカタバミの花の中にも落ち着かぬものありしきりに揺れる

ハナカタバミの群生地、あるいは花壇。花がそれぞれいろんな向きに咲いている。ひとつだけ大きく揺れているものがあるが、地面だけに風の流れがあるのだろうか。


ひかうしはきよたいのなかからたましひをにがしてばらのもとへとかへす

飛行士は巨体の中から魂を逃してバラのもとへと還す

『最終飛行』を読む。あの「星の王子さま」の中の「バラ」はサン・テグジュペリの妻コンスエロのメタファーだったようだ。とすれば、作家の屈折した愛情と戦争がこの名作を作り上げたと言える。「星の王子さま」の世界は作家のイデアの世界だったのだろう。

Sunday, November 28

えきまへの


えきまへのいちやうなみきのみきなぜかおほくはおなじむきにかたむく

駅前のイチョウ並木の幹なぜか多くは同じ向きに傾く

見慣れた駅前のイチョウ並木。ふと見ると多くの幹が同じ方向に傾いているのに気づいた。日当たり?風向き?あるいはイチョウの勝手?


かくさたとへきよこうであるとおもつてもからだはきよこうのゆめからさめず

格差たとへ虚構であると思つても身体は虚構の夢から醒めず

『格差という虚構』読了。いくら格差が虚構だと言われてもその「虚構の夢」から醒めるのは容易ではない。それはある種の悟りのようなもの。人が格差から本当に解放されるのは、死の時か。

Saturday, November 27

なかまから


なかまからはなれてひとりさいてゐるすいせんくきがをれてもめげず

仲間から離れてひとり咲いてゐるスイセン茎が折れてもめげず

スイセンの花壇。まだ花はつけていないものばかりだが、離れて花をつけているものもいる。茎が弱かったのか、風に耐えられなかったのか、茎が折れて花は下向きになっていた。勇気ある先駆者。

Friday, November 26

うつくしき


うつくしきものはとまらずすすきはらにしびのなかでしろくかがよふ

美しきものは止まらず芒原西日の中で白く燿ふ

京王線で多摩川の鉄橋を渡るとき、ちょうど西日で河原のススキ原がえも言われず美しく輝いていた。一瞬の光景であるが美とはそういったものかもしれない。

Thursday, November 25

やまなみの


やまなみのむかうにしろいあたまだすふじさんよろしくおねがひします

山並みの向かうに白い頭出す富士さんよろしくお願ひします

八王子。気になっていた山並みの向こうの山はやはり富士山だった。冠雪した頭が少しだけ山際から出ているのでわかった。富士山を見つけると見守られている気分になる。まるで天然の社。

Wednesday, November 24

いちやうのき


いちやうのきくわうえふぐあひはくわんきやうかあるいはゐでんしはたまたぐうぜん?

イチョウの木黄葉具合は環境かあるいは遺伝子はたまた偶然?

病院の敷地のイチョウ並木。きれいに黄葉している。樹形も美しい。彼らの「成功」はどこから来るのか。環境か、遺伝子か、あるいは偶然か。そんなことを考えるのは、今読んでいる『格差という虚構』という本のせい。イチョウにも「格差」があるにちがいない。

Tuesday, November 23

こうゑんの


こうゑんのなんきんはぜはこうえふしわたしのなまへをよぶひとがゐる

公園のナンキンハゼは紅葉し私の名前を呼ぶ人がゐる

公園のナンキンハゼの紅葉が始まっている。見惚れていると突然名前を呼ばれた。ベンチのその人の声で何のためにここにいるのか思い出した。

Monday, November 22

つたのへい


つたのへいいちめんのははかれおちてはびこるつたはしんけいみたい

ツタの塀一面の葉は枯れ落ちて蔓延る蔦は神経みたい

いつもの通り道。キヅタに覆われた塀の家があるが、葉が枯れ落ちて塀に広がる蔓の広がりが見える。まるで塀それ自体の神経のように。

Sunday, November 21

そのあかは


そのあかはうちみのやうないろだけどさるすべりだつてもみぢするのだ

その赤は打ち身のやうな色だけどサルスベリだつて紅葉するのだ

夏から秋にかけて花をつけていたサルスベリも落葉の時期となった。見ると紅葉している葉もあるが、その色はどす赤い。アントシアニンが足りないのかもしれないが、紅葉は木全体を守る仕組みだ。人間の審美眼など知ったこっちゃない。


ふとみるとくろがねもちのしろいみきにともだちまーくのやうなめがある

ふと見るとクロガネモチの白い幹に「ともだちマーク」のやうな目がある

赤い実をつけているクロガネモチ。その白っぽい幹にはひっかき傷のようなラインが目につく。なかにはあの二十世紀少年の「ともだちマーク」の不気味な目のようなものがあって、見ていると「ともだち」にされそう。

Saturday, November 20

ろぜつとの


ろぜつとのなかからいつぽんくきがでてすましてさいてるたんぽぽのはな

ロゼットの中から一本茎が出てすまして咲いてるタンポポの花

近所の遊歩道。ふと見ると一本のセイヨウタンポポの花。「あれっ!まだタンポポの花が咲いてる」と思ったが、本人(草)は別に気にする様子もない。小春日和だしね。


ぎーぎーとねぢまくやうになくおながおねがひわざはひもたらさないで

ギーギーとネジ捲くやうに鳴くオナガお願ひ災ひもたらさないで

オナガは西日本にはいないということを知って改めて見てみる。評判の悪声は「ねじまき鳥」の鳴き声のようにも聞こえるが、きっと悪いことはもたらさない、ただのオナガだろう。

Friday, November 19

あんきよとは


あんきよとはみえないすいろそのうへのあをぎりしたからくちていく

暗渠とは見えない水路その上のアオギリ下から朽ちていく

世田谷は暗渠が多い。たいていその上は遊歩道になっている。たぶん地面は冷たいのだろう、アオギリの葉も下の方から色が変わって腐っていく。


つきをくふものはなんだらうげつしよくのあとのまんげつてかてかひかる

月を食ふものは何だらう月食の後の満月テカテカ光る

今夜は月食。満月のときに起こる現象だが、地球や太陽の位置など分からない昔の人はどう見ていたのだろうか。文字通り月が食われると思って「食」と言ったのか。食われても元の形に戻る満月は食えない月?

Thursday, November 18

るわんだの


るわんだのをかにひろがるきくのはなつまれてかとりせんかうとなる

ルワンダの丘に広がる菊の花摘まれて蚊取線香となる

テレビのワールドニュースでルワンダの丘に広がる白い花が映っていた。蚊取線香の材料となる除虫菊だ。花には強力な殺虫効果がある。貧しい地元民の貴重な収入源となっているそうだ。以前使っていた渦巻き形の蚊取線香も元はルワンダで咲いていた花かもしれない。

Wednesday, November 17

はをおとし


はをおとしさやのみだけのはなずはういつになつたらかれきになるか

葉を落とし莢の実だけのハナズオウいつになつたら枯れ木になるか

ずっと前から黒い莢の実をずらっと垂らしていたハナズオウ、久しぶりに見るとすっかり落葉。春には莢はなかったはずだが、いつ莢は落ちるのか気になる。

Tuesday, November 16

あちこちで


あちこちでみかけてきになるきみのなはほそばひいらぎなんてんだとか

あちこちで見かけて気になる君の名はホソバヒイラギナンテンだとか

あちこちの植栽でよく見る特徴的な黄色い花。気になっていたが、調べてやっとわかった。たぶん昔は知っていた名。

Monday, November 15

いつもみる


いつもみるえきのかきのきかきすべてかききゆきもりのかきものこさず

いつも見る駅の柿の木柿すべてかき消ゆ木守の柿も残さず

駅舎の窓の前に一本の柿の木。葉は落ちても柿の実は残っていたのに今日見るとその柿がすべてない。せめてひとつは残してほしかった。

Sunday, November 14

えきまへの


えきまへのもみぢばふうはみなみきをぐるぐるしばられでんしよくとなる

駅前のモミジバフウはみな幹をぐるぐる縛られ電飾となる

クリスマスが近づいてくるといろんな場所が電飾だらけとなる。夜は悪くはないのだが、昼間見るとなんとも興ざめな感じだ。

Saturday, November 13

しべりあの


しべりあのくろいたいやうさいごにはちのけのかよふひのでにかへる

シベリアの黒い太陽さいごには血の気の通ふ日の出に還る

神奈川県立近代美術館の香月泰男展を観に行った。「シベリア・シリーズ」は2004年に東京で観たことがあるのだが、それは完全なものではなかったようだ。今回最晩年の作品まで含めて観ることができて彼のライフワークがより完成形に近づいていたことを知った。一言で言うと絵に血の気が戻ったように感じた。なぜかホッとした。


まちなかとちがひうみべのつはぶきははもたくましくををしくみえる

街なかと違ひ海辺のツワブキは葉も逞しく雄々しく見える

葉山の浜辺で。やはりツワブキは海岸の植物だ。海辺では見違えるほど葉も太く丈も高い。ツワブキは香月泰男が好んで描いた花だという。

Friday, November 12

しよくぶつの


しよくぶつのこゑをきくことできたならざつさうぬくのもつらいだらうに

植物の声を聞くことできたなら雑草抜くのも辛いだろうに

テレビで植物の声が聞こえるという「スーパー造園師」の番組を見た。そういう「心的現実」に生きる人はけっこう辛いのではないだろうか。幸い私はまったく草木の声など聞こえない(人間の声だってあやしい?)。

Thursday, November 11

かぜつよく


かぜつよくやまなみしかとみゆるごごこぞのいまごろふじみたりしか

風強く山並みしかと見ゆる午後去年の今ごろ富士見たりしか

空気が乾燥して山並みがはっきりと見えるようになってきた。去年の勤め先は富士山がよく見える立地だったが、今ごろはもう見ていたのだろうか。

Wednesday, November 10

むれをなす


むれをなすきんゑのころはかぜふくとによろによろみたいにそのみをゆする

群をなすキンエノコロは風吹くとニョロニョロみたいにその身を揺する

空地に群がって咲いているキンエノコロの花穂。強い風が吹くと西日の中でムーミンに出てくるニョロニョロみたいに揺れ動いている。

Tuesday, November 9

どくだみや


どくだみやおしろいばなはかれはじめすすきもかれたらろぜつとでばん

ドクダミやオシロイバナは枯れ始めススキも枯れたらロゼット出番

いつも見ている駅舎の外の狭い空地。ススキだけがまだ花穂を元気につけているが、その下を見るとしっかりロゼットが見える。冬はロゼット?

Monday, November 8

わるぐちを


わるぐちをいふひとみにくいきくひとはもつとみにくいらくえふすすむ

悪口を言ふ人見にくい聞く人はもつと見にくい落葉進む

悪口を言う人は悪口地獄に堕ちている。それをうんうんと聞き続けるというのはその人が地獄にい続けるのを手助けしているようなものだ。世の中のこういう「善人」がかえってたちが悪い。さっと木を見る。

しちごさん


しちごさんらしいかぞくがはれやかにとほればきづたもいろづくしぶく

七五三らしい家族が晴れやかに通ればキヅタも色づく渋く

等々力の神社あたり。七五三らしい家族が晴れ着を来た女の子を中心にやって来る。その華やかな色と渋いキヅタの紅葉。取り合わせの妙だ。


くすのきのたいぼくのもとあちこちにみがちらばつてゐるくろびかりして

クスノキの大木の下あちこちに実が散らばつてゐる黒光りして

神社のクスノキの大木。その下に黒い実が散らばっていて黒光りしている。落ちてもしっかりと力のある実だと感心した。

Saturday, November 6

ぎよしうなら


ぎよしうならちるつばきよりしろふようそのはのかそけさもうしびれます

御舟なら散る椿より白芙蓉その葉のかそけさもうしびれます

山種美術館で速水御舟の絵を観てきた。重文の「名樹散椿」や「炎舞」は確かに圧巻だったが、私の好みは「白芙蓉」など繊細な小品だ。


けふちくたういつまでさくかばかかともいはれてもよいふゆまでさけよ

キョウチクトウいつまで咲くかバカかとも言われてもよい冬まで咲けよ

恵比寿。立派な門前にキョウチクトウの白い花が咲いていた。川柳など気にしないでいつまでも咲き続けてよいぞ、と励まし(?)の声をかけた。

Friday, November 5

きんでいの


きんでいのたけにぐさのはこのよならずりゆうしのえがくくさのみのせかい

金泥のタケニグサの葉この世ならず龍子の描く「草の実」の世界

『色で読み解く日本画』という本を読んだ。その中に川端龍子が描いた「草の実」があったが、金泥のタケニグサの葉がえも言われぬ凄さ。

ざつさうが


ざつさうがかられたあとにまつさきにはをだすふきのはびこるゆうき?

雑草が刈られた後に真つ先に葉を出すフキのはびこる勇気?

近所の駅。駅舎の前の空地の雑草が刈り取られて半月ぐらい。今日見ると早くもフキが真新しい葉を出していた。嫌われる勇気ではなく・・。

Thursday, November 4

いがいがの


いがいがのかたまりそのみにつのにほんあるのはあめりかせんだんぐさか

イガイガの塊その実に角二本あるのはアメリカセンダングサか

近所で。似たような名前の草が多いが、センダングサにもいくつかのバリエーションがある。コセンダングサとの見分け方。

Tuesday, November 2

がくせいが


がくせいがおほくすんでるえきちかくみせはあれどもしよくぶつはなく

学生が多く住んでる駅近く店はあれども植物はなく

学芸大あたり。学生が住みやすい町だが、駅前には樹木はもちろん雑草すらあまりない。奥に行くと人家の植栽がやっと目につく程度。

あいされる


あいされるものはかよわくすてられるものはづぶといひめじよおんさく

愛されるものはかよわく捨てられるものは図太いヒメジョオン咲く

近所の遊歩道。一面の草むらにヒメジョオンの花が元気に咲いている。きれいな花だがどこにでも咲いているせいか、あまり注目されない花。


やぶがらしにかくれてまつかなはながさくうきつりぼくもざつさうのうち

ヤブガラシに隠れて真つ赤な花が咲くウキツリボクも雑草のうち

植栽の上に一面にヤブガラシ。その中に隠れるように鮮紅色のウキツリボクの花のがくが見える。今は場違いな光景だが・・・。

Monday, November 1

あめのなか


あめのなかいすにすわつたさげふゐんおほきなはさみでざつさうをきる

雨の中椅子に座つた作業員大きな鋏で雑草を切る

用賀あたりの光景。植え込みの中で作業員が大きなハサミで下草を刈り取っている。たぶん器械は使えないのだろう。


ぼけのえだにあかいつぼみがみつつよつおくにはくさつたみがひとつ

ボケの枝に赤いつぼみが三つ四つ奥には腐つた実がひとつ

ボケの赤いつぼみが目を引く。注意してみると枝の中にその実が半ば腐ったようになって打ち捨てられている。