『大航海時代の日本人奴隷』を読んで。
15世紀半ばから17世紀半ばの大航海時代。西欧の商人やキリスト教会の聖職者が世界を股にかけて活躍した時代だ。
日本には、長崎にポルトガル人がやって来て西欧の産物や知識をもたらした。ただ、ヨーロッパ人は文明の果実を与えるために来たのではなく、あくまで商売と布教のために日本にやって来たのである。
その時に日本からおおぜいの人間が奴隷として海外に連れ出されたことはあまり知られていない。
本書にはその状況が淡々と述べられている(原著はポルトガル人の学術書である)が、奴隷にされた当時の日本人のことを考えると不快感を感じずにはいられない。
ヨーロッパ人は、日本人だけでなく、アジア、インド、アフリカなど彼らが訪れた海外の土地から人を集めて奴隷とした。
奴隷は教会で洗礼を受け、本来の名前を奪われてヨーロッパ人に奉仕する奴隷とされて顔や顎に逃亡防止の烙印を押された。
彼らは、主人のために肉体的に奉仕したが、家事や雑務だけでなく、性的な道具にされた女性も当然いたであろう。本当の意味での性奴隷である。
彼らの多くはさらわれたり、売られたり、戦争の捕虜となったりして、ポルトガル商人の手に渡された。ほとんどが「年季奉公」だと思って海外に連れて行かれたようだ。
彼らは年老いて肉体的労働ができなくなった時にやっと「自由民」に戻れた。解放された後、多くは路上の乞食となって惨めな一生を終えたと思われる。
大航海時代の奴隷とはもっぱらヨーロッパ人に奉仕するための元人間であり、ヨーロッパ人以外はすべて可能性として奴隷階級であった。
日本人だけでなく、中国人、朝鮮人、インド人、カフル人と呼ばれたアフリカ人などヨーロッパ人以外のほとんど人々が彼らの奴隷となっていた。
日本が徳川時代の安定した統治機構を持たなければもっと大量の日本人が奴隷の身分となって海外に連れ出されたであろう。その意味では鎖国は正しかったかもしれない。