人も国も物語られて自らの使命に気づき苦難を生きる
『物語 ウクライナの歴史』(黒川祐次著)を読んで。(以下敬称略)
本書を読むとプーチンもゼレンスキーもそれぞれのロシアとウクライナの「物語」を背負って対峙していることが分かる。
かつてウクライナの地に繁栄した「キエフ・ルーシ公国」の正統な後継者はロシアだとロシア帝国時代もソ連時代も言われてきた。
歴史上たび重なるウクライナの地での独立運動はすべてロシアを始めとする近隣の大勢力の力で封じられてきた。
ソ連が崩壊したときにやっとウクライナは独立を手に入れた。かつて「ヨーロッパの義父」とまで言われていた「キエフ・ルーシ公国」。その伝統からすればウクライナの人々の目は自然と西のヨーロッパに向く。
その「ウクライナ人の物語」を絶対に認めないのが、プーチンを始めとする「ロシア人の物語」だろう。
単なる地政学的な対立ではなく、「大きな物語」の結末をかけた戦いが、深いところで行われているように見える。
ところで、ゼレンスキーはユダヤ人で、もともとウクライナ東部の出身で、母語はロシア語だという。
ウクライナ人・ユダヤ人・ロシア人の関係も一筋縄でいかない「物語」があるはずだ。
我々日本人には読みきれない「物語」。