Thursday, March 24

『人はどう死ぬか』


本当は正しい医者の不養生健康な人コロリと死ねない?


『人はどう死ぬのか』(久坂部羊著)を読んで。

著者は『MR』や『悪医』などの医療小説で有名な小説家であり、長く在宅医療に関わってきた医者でもある。

おそらく普通人の何百倍も人の死を身近で見てきたにちがいない。

著者は、日本人の死についていくつか問題提起している。

たとえば、日本人は死を日常生活から遠ざけてしまったために、実際の死をイメージしにくくなっている。

だから、私たちは死ぬことは知っていても、実際の死がどのようなものかほとんど知らない。

そのために死に対する過剰な不安と幻想にとらわれていると著者は指摘する。

また、日本人の7割が病院で死ぬようになったために、昔ならばすんなり死ねたのに、病院で延命治療を受けてなかなか死ねずに長引く苦痛の中で死んでいかねばならないとも。

つまり、長寿は決して幸運ではなく、長生きすればするほど苦痛や苦悩の時間が増大することになる。

「ピンピンコロリ」は大きな誤解であり、むしろ健康であるほどなかなか死ねないという。かえって不摂生で体を弱らせている人のほうが「コロリ」と死ねる。

上手に死ぬためには、病院に関わりを持たないのが一番だと医者である著者は言っているが、これは例の「がんもどき理論」の近藤誠氏とよく似た主張である。

では、一番好ましい死に方は何か。本書によると、がんで(病院ではなく)在宅で死ぬことだそうだ。

がんの告知を受けたら(年齢にもよるだろうが)「しめた!」と思うべきか。

私にとってはまさに「コペルニクス的転回」の1冊だった。