Wednesday, March 9

『羊は安らかに草を食み』


難民は今もどこかを歩みたりかつて我らも満洲逐わる


『羊は安らかに草を食み』(宇佐美まこと著)を読んで。
満洲から命からがら逃げ延びた日本人たちの壮絶な逃避行を描いている。

80年近く前のことだが、その野蛮や残酷を体験し記憶している人もいる。

本書は、認知症にかかった老女の旅を通してその苛酷な現実を追体験する物語だ。

地獄のような死地で苦しんだ人々の中に、もしも自分がいたとしたらどうだろうか。

逃げる自分か、襲われる自分か、殺される自分か、殺す自分か、あるいは奪う自分か。