Friday, October 7

『カモメの日の読書』


カモメ来よ本を開けば純白のページの海に一青沙鴎

『カモメの日の読書』(小津夜景)を読んで。

『いつかたこぶねになる日』と同じく漢詩エッセーとでも言うべき作品。こちらの方が先の出版。

各篇ごとに漢詩をめぐる作者の漢詩的日常が描かれている。フランスでのノマドのような暮らしぶりが小気味よい。

作者は『フラワーズ・カンフー』で田中裕明賞を受賞している俳人だが、その出発点に漢詩の世界が大いに関わっていたことは興味深い。

いずれも自由自在なタッチで書かれていて愉しいエッセーなのだが、「水のささやきを聞いた夜」と「言葉にならないさよなら」で交わされる頼山陽と愛人の江馬細香の漢詩「相聞歌」のように漢詩人たちの人生を垣間見せるものもある。

驚いたのは、作者が子どものときに本を声に出して読むと、母親がリコーダーでただちにそれを曲に変える遊びをしていたという話。

母から娘への芸術的「ギフテッド」。この人の文才はお母さんの魔法で生まれたのかなと思ってしまった。